「3.11後の企業行動」に関する寄稿文

 

第6回  「福島第一原発事故では真の意味での「失敗の検証」を」

弁護士
國廣  正

  東日本大震災による福島第一原発のメルトダウン事故は、①「原発安全神話」による事前の備えの欠如と、②事故発生後の危機管理の致命的な不手際を明らかにした。
  この失敗は詳細に検証されなければならない。
  ただ、この場合に気をつけなければならないことがある。それは安易な「犯人捜し」に走ってはならないということである。
  たしかに、②の点における東京電力の対応のまずさは目を覆いたくなる。しかし、それをもたらしたものは①であり、①をもたらしたものは長年にわたる原子力行政であり、それを形作ったものは主権者という名にあぐらをかき、一方では電気を湯水のごとく使いながら、他方では「いかなるリスクもあってはならない」とする国民的なメンタリティである。
  そして、「分かりやすい」構図から東電ばかりを叩いて「溜飲を下げる」のでは、今回の事故から国民的教訓を得ることは困難だと思う。

  私は日本長期信用銀行(長銀)破綻に際して「粉飾決算」を行ったとして東京地検特捜部の国策捜査で起訴された長銀経営陣の刑事弁護人となり、足かけ10年にわたって裁判闘争を行い、最終的に最高裁で逆転無罪を得た経験がある。
  長銀破綻に対する国策捜査では、国民の拍手喝采を得るための「犯人」を追い求めるあまり、「金融システム崩壊の危機というシステミック・リスクが顕在化した状況で、どのような決断がなされ、あるいはなされなかったのかという失敗の検証」を行う貴重な機会が失われてしまった。我々は、同じ過ちを繰り返してはならない(詳細は拙著『修羅場の経営責任-今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実-』(文春新書)を参照されたい)。

  「東京電力福島第一原子力発電所における事故調査・検証委員会」(原発事故調)は、「失敗学」の第一人者である畑村洋太郎氏を委員長とし、事故原因や従来の原子力行政の問題点、さらには事故時の政府の広報対応などを多角的に解明することになった。
  畑村氏は「組織事故ととらえなければ真の姿に迫ることはできない」と語り、関係者から真実を引き出すため「責任追及はしない」と強調したが、この方向性は正しいと考えられる。
  原発事故調には、「真の第三者委員会」として、独立性を完全に確保し、「空気」に流されることのない中立・公正な調査を行い、国民と海外に対する説明責任を十分に果たす「百年の検証に耐える調査報告書」を出すことが期待される。
  この国に、大震災による原発事故を真に克服できる力があるかどうかが問われている。

掲載日:2011年9月22日





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