「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第7回  「BCPの情報共有を積み重ね、競争力ある復興へ」

日本経済研究所 インフラ・環境局 副局長
野田  健太郎
専門  BCP、企業の社会的責任

  今般の震災を踏まえ、企業の防災・事業継続への取り組みを今後のどのように考えるかが重要なテーマとなっている。日本企業の事業継続力を向上させるための処方箋として、情報共有・情報開示の点を指摘したい。

  福島県にある工場が被災した電機メーカーでは、別の地域にあった工場で早期に代替生産を開始した。費用対効果の点で事前に具体的な生産移管体制まで準備することは難しかったが、工場間での情報共有は行っていた。事前に検討をしていなければ、復旧にさらに時間がかかった可能性がある。震災の直後は企業間で様々なリソースの奪い合いになるので、この差は後々の生産復旧に大きな影響を与えることになる。企業内・企業間で事業継続計画(BCP)に関する情報を共有することができれば、その後の復旧に大きくプラスに働く可能性が高い。 

  企業内でBCPの情報を共有し、将来的にはこの部分を拡張し、サプライチェーンや業界団体での情報共有の枠組みをつくるといった動きも求められる。こうした枠組みは自治体、公的機関が緊急時に活用可能な情報基盤の形成にもつながる。自治体からは今回の震災では過去の地震に比べて被災地域が広範にわたっていたため、どの企業から手をつけてよいかわからなかったという声がある。自治体に限らずさまざまなステークホルダーにとって、従来開示されることが少ない企業のBCPに関する情報が提供されることは大きなメリットを有している。例えばインフラ系企業の災害時の目標復旧時間や復旧レベルの開示は関連する企業や地域住民の計画にも非常に有用な情報になるからである。加えて、今回の震災では海外から日本のサプライチェーンの脆弱性が指摘されている。BCPに関連する情報を先手を打って開示し、ステークホルダーとの情報共有を図ることで、想定外の事態に遭遇した場合でも双方が抱く不安を取り除くことができる。

  今回の震災では企業の事業継続に大きな影響が出たことに加え、電力問題、原子力発電所の問題、さらには首都直下地震など甚大な被害が想定される地震の発生が指摘されている。企業は当面の復旧に力を注いでいるものの、次の段階で事業継続を強化するための体制の構築を迫られている。情報共有をはじめとした実行性のあるBCPを進め、こうした事業継続への取り組みを国内外に説明していく積み重ねが、日本ブランド回復のための第一歩となるであろう。

著者略歴
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科修了、1986年日本開発銀行(現 日本政策投資銀行)入行、2009年4月より現職、内閣府事業継続計画策定・運用促進方策に関する検討会委員、著書「事業継続マネジメントBCMを理解する本」(日刊工業新聞社)など

掲載日:2011年9月28日





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