「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第8回  「リスク新時代の企業行動─分化から、統合(つなぐ、結ぶ)へ」

立教大学大学院教授
池田  耕一

  3月11日に発生した地震、津波、そして原子力発電所事故に関連して次々と明らかになったことが多くあります。そのひとつは、僭越ですが、専門家といわれる多くの方々の事前対策と事後対策における判断の「狭さ」、いわば木を見て森を見ずともいえる「狭さ」だといえましょう。個々の専門分野の知見は深くとも、それは狭い領域に留まり、目的全体に対する基本的判断の妥当性に深い疑問を持たれることが続出しました。

  ご存じのとおり、近代科学の発展の歴史は専門細分化の歴史でもあり、これはまた、企業における経営活動においても同様でした。組織と機能の分化によって、企業経営は生産性を高めてきました。企業や官公庁などにおける弊害としてよく指摘される「縦割り」の根深さは、組織毎の構成員の仲間意識とともに、各種各面における分化によって生産性を高めてきたことが背景にあるといって過言ではありません。

  近年多発している自然災害だけではなく、20世紀末からの急速かつ急激なグローバル化によって、世界は、そして日本はリスク新時代とも形容すべき状況に直面しています。リスクとは、「目的に対する不確実性の影響」と把握されます(ISO 31000)。不確実性が発生する頻度は急激に高まり、その影響度は従来よりもはるかに大きくなりました。東日本大震災による部品生産ストップの影響が、日本だけではなく世界の製造業に波及したことは記憶に新しいところです。

  このような状況下、「統合(つなぐ、結ぶ)」が企業行動のキーワードになりつつあります。巨大な影響を及ぼす不確実性が頻発する経営環境のなか、社内においては分化した組織と機能をつなぐこと、さらに社会の動向と社内の判断・行動をつなぐことが、持続可能な企業経営をめざす上で不可欠な事柄となった時代を迎えています。この構造的変化が、たとえばダイバーシティ(多様性)促進の動きに、CSRの取り組みにおけるステークホルダーエンゲージメントの展開に、そして「一円融合」の重要性の再認識に、それぞれつながっているように考えます。

掲載日:2011年10月3日





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