「3.11後の企業行動」に関する寄稿文

 

第9回  「震災支援を日本再生のモデルづくりにするために」

公益社団法人日本フィランソロピー協会  理事長
髙橋  陽子

「数字にはドラマがある」。そう思うようになったのは、本当に小さな公益法人だが、その経営に携わるようになってからだ。
一つの数字は、そこに至るプロセスの結果である。さまざまな葛藤や苦悩、たゆまぬ努力、出会いや感謝など人間の心や人間模様、人の生きざまそのものが数字の中に詰まっている。今回の東日本大震災で報道されるさまざまな数字は、圧倒的な力と哀しみを持って我々に迫ってくる。ただ、一方で、寄付金の額、ボランティアの数、企業の復興に向けての社会貢献に傾注するエネルギーを見ると、その数字が内包する日本人の底力を実感し、今こそ日本再生の契機であると思う。
さて、各社の震災支援は、緊急支援から復興支援へとそのステージを変えつつある。しかし、そのシナリオがまだ見えていない企業が多い。地元の既得権益や利害、失速し硬直化した行政との調整など従来の思考の枠組みに阻まれ始めている。そうした際には、コーディネーター役のキーパーソンが不可欠であるが、不足しているのも現実である。ただ、そうであるならば、まず企業が小さな単位でモデル事業を実施し、それを実績として他地域に広げるのも一つである。新聞紙面などには、企業の今後の支援金額など、魂のこもらない数字が目につくこともあるが、気概を持った挑戦を期待したい。その過程で、企業においても、発想の転換、新たな価値創造など、企業そのもののイノベーションも可能になるのではないだろうか。
このたびの震災で、少子高齢化、過疎化、事業の後継者不足、自然エネルギー問題など、従来、日本の各地で同様に抱えていた課題が一気に顕在化した、という見方もできる。この大ピンチを日本再生のチャンスにしなければ、と誰しも考えているが、それを一番身に沁みて実感しているのは意外と民間企業かもしれない。自然のリズムの中にしか人間の営みも企業の営みもないことを思い知らされた今、その前提に立った未来のグランドデザインを大きく描き、小さな実績をあちこちで積み重ねることで希望の灯を灯せると思う。企業の、これから示す数字に志と覚悟をドラマティックに込めてもらいたい。そのドラマが人の心を興し、地域を再生し、新たな遺産を未来に残すことができる。そのために、私も、ささやかだがコーディネート役を果たしていきたいと思っている。


掲載日:2011年10月6日





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