「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第11回   3.11で変わった「企業意識」

中島経営法律事務所代表  弁護士   
      中島  茂

  
  1. 自助努力姿勢への転換
  「3.11震災」を境に企業の意識は劇的に変化した。「行政に頼って生きてゆく」という意識から「自助努力で生き残って行く」姿勢へと変わったのである。従来、企業の意識の奥底には「万一のときは行政が企業を守ってくれる」という気分があった。高度成長時代に行われていた、監督官庁が音頭を取って企業集団が粛々と進んでゆく、「護送船団方式」の残滓である。この気分は根強いものでなかなか企業意識から抜けきることはなかった。1995年、PL法(製造物責任法)が施行されたとき新法の解説会で講師を務めたことがあるが、終了後の質疑応答である会社トップから「行政の示す安全ガイドラインにさえ従っていれば、心配はないのでしょう?」との発言があった。一事が万事で、企業経営者の心には多かれ少なかれ、こうした心理があったのではないか。ところが、3.11では行政は頼りにはならないことが露呈した。「想定外」「確認中」「念のため避難」「ただちに健康への影響はない」といった「あいまい言葉」の氾濫のなかで、電力供給の実態も明確には知りえない状況下で企業は対応を迫られた。そうしたなかで企業が順番に工場を稼動させる「輪番操業」や、「共同配送」「代替生産」などの対応策を必死で生み出してきた。「風評被害」に対しても、みずから放射線測定器を入手して自分で線量を測定して出荷、販売する試みも行われている。こうした「自助努力」の動きは従来の日本企業には見られなかったことだ。おそらく、これは一過性のものではなく今後も続くものと思われる。そうだとすると、「物づくり」の技術力に加えて日本企業は力強いバックボーンを身に付けたことになる。
  2.市民の意識の変化への対応
 変わったのは企業の意識だけではない。一般市民の意識も根本的に変わった。震災後、6月7月で東京圏の人口が4000人減少し、大阪圏の人口が41年ぶりに5か月連続増加している。皆、口には出さないが、行政の発信する情報を鵜呑みにすることなく、自分で安全性を判断し行動し始めているのだ。行政への意識が変わっただけでなく、企業、特に大企業に対する、市民の意識も同様に変わったものと受け止めるべきだ。こうした意識変革があるからこそ「やらせメール事件」もあれだけの騒ぎになった。企業はこうした市民の意識変化を正面から受け止め、今まで以上の真剣さをもって、「安全」「公正」という大きな目標に立ち向かっていかなければならない。ほんのわずかでも企業側に心の緩みがあれば「生き残って行く」ことは覚束ない。


掲載日:2011年10月21日





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