「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第13回  被災地の復興から日本の再建へ

高崎経済大学経済学部   教授
水口   剛
専門  責任投資・環境情報開示

 3.11の後、多くの企業が損得抜きで緊急支援を行った。積み上げてきたノウハウとネットワークを生かして、見事な働きを見せたと聞く。素直に称賛したい。だが、企業である以上、いつまでもそればかりではいられまい。いずれは本業に戻らければならない。大事なのはその先だ。震災直後に見せた「共感力」を失わず、事業に生かしてほしい。期待することは2つ。本業を通じた被災地の復興と日本の再建である。
 まずは復興。国の復興事業はもちろん重要だが、インフラを再建するだけでは十分ではない。地域の産業を復活させなければ、本当の復興にはつながらない。地域に仕事がある、ということが、生活の基盤なのである。
 被災地の範囲は広く、農業や漁業から各地の地場産業まで、多種多様な事業がある。そのそれぞれに細かな対応が必要になる。まさに日本企業の腕の見せ所だろう。
 だが、話はこれだけでは終わらない。もう1つ、重要な仕事が残っている。日本の再建。3.11は、日本が再び歩み出す契機とならなければなるまい。
 そして震災を経て目指す未来は、今までと同じものではあり得ない。多くの人は、そう思ったのではないか。
 たとえば原発事故は、私たちの社会が、暴走したら手のつけようのないほどのリスクと背中合わせだったことを明らかにした。そして原発立地地域の人たちや下請け・孫請けの作業者がより多くのリスクを負うという構造も明白になった。それでも大規模技術に依存し続けるのか。一方で、自然の猛威や地球の荒々しさも体験した。もし今後、地球温暖化などを放置すれば、地震や津波とは別の形で、再び大きな災厄に見舞われないとも限らない。そして、震災を通じて、多くの人は、物の豊かさを極めたはずの現代文明のもろさも痛感したに違いない。
 そうだとすれば、今後は、身の丈に合った技術で、自然とうまく付き合いながら、物に依存せずに豊かさを実感できる、そんな新たな文明を目指して進み始めるべきではないのか。そして、そのような未来が見えて初めて、私たちは、傷ついた日本という国への信頼と自信を取り戻せるのではないか。精神論やスローガンでなく、それを実現できるための社会の「仕組み」を用意しておきたい。
 何年かのち、振り返って、こんなふうに言われたいではないか。  
 あの震災を経て日本は変わったと。物質文明を極めながら、物に依存しない豊な文明を築いた、と。震災を機に日本は変わったよねと。


掲載日:2011年11月15日



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