「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第17回  「「絆、気づき、共感」とCSV(共益の創造)」

駿河台大学教授
水尾  順一
専門  CSR,経営倫理論

今回の東日本大震災を受けて、その後の対応では以下の3つに分類されるようなこれまでにない社会貢献のあるべき姿が見えてきました。
第1は、被災地との「絆」を重視した活動です。たとえば、ヤマト運輸が行った被災地に対する支援活動の一環として行った、「宅配便1個で10円」寄付をするといった企業行動です。この活動は「コーズ・リレーティド・マーケティング(慈善運動協賛型活動)」と言われ、もともとはアメックスがニューヨークの自由の女神の修復活動で行ったものです。
これには「偽善のマーケティング」だ、その分安くしろ、などの異論もありますが、ヤマト運輸の例はそれに当てはまらないと考えます。なぜならこの活動の背景には明確な企業の理念があり、社会倫理にきちっと対応し、最初から意図したものではないからです。つまり、緊急対応で「世のため人のためになっているか」という経営理念がバックボーンにあり、それが実践に移された活動だからです。
第2は、社員の「気づき」を促進する活動です。たとえば、富士ゼロックスやNTTドコモが新入社員を被災地に派遣し、ボランティア活動を体験させることで、彼ら自身が肌で感じて気づきを生み出すからです。
そして第3は、「共感」を生み出す活動です。たとえば、コンビニエンスストアのローソンが、被災地の人々の生活の苦しみに共感し、一時も早く出店することで現地に貢献する活動に結び付きました。また昭和電工もエネルギー・インフラ支援にあたって「共感」の視点から活動を展開しました。
これらの3つに共通するのは、本業を通じて企業のコア・コンピタンス(中核となる競争能力)を活かす活動を行うことで、社会的課題の解決という現地の利益につながることです。その結果、米国の経営学者のマイケル・ポーターがいう、両者にとって利益(価値)に結びつく「CSV(Creating Shared Value:共益の創造)」がうまれたことです。
そして、この「絆、気づき、共感」という「新3K」が2011年の東日本大震災以降におけるCSVのキーワードになってきました。この新しい3Kは最終的には、社会からの高い評価を得るだけでなく、社内に活力を与えることにもつながるものと確信しています。

著者略歴
㈱資生堂で約30年間の勤務を経て駿河台大学へ奉職、現在に至る。博士(経営学:専修大学)。社団法人経営倫理実践研究センター上席研究員、日本経営品質学会副会長、日本経営倫理学会常任理事、2010年ロンドン大学客員研究員。2008年~2010年経済産業省BOPビジネス政策研究会座長・委員など。著書に『逆境経営 7つの法則』(朝日新書)他多数。


             掲載日:2012年3月2日



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