「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第24回  「「つながり」と「協働」という古くて新しい力」

慶應義塾大学 政策・メディア研究科教授
金子  郁容
専門  ネットワーク論、コミュニティ論、社会イノベーション

  大きな震災から一年半となる。その間、日本の政治は混迷状態を続け、世界的な財政不安と円高で景気の先行きは見えず、無力感も漂っている。その中で、東日本大震災の悲劇の中から、光が見えたような気がする。 
  1995年の阪神・淡路大震災のとき130万人のボランティアが活躍し、後に「ボランティア元年」と呼ばれた。16年間でボランティアは当たり前のこととなった。中学生から企業人からお年寄りまで、みなが、自然に「できること」をして「人の役に立ち」、「新しい公共」の担い手になっている。 
  目を覆いたくなるような状況の中で「つながりの力」が再認識された。日本社会は、きっかけがあれば、ひとりひとりの気持ちと行動によって、大きく変わることができる。 
  東日本大震災の支援活動の中で、これまでの災害支援にないパターンの「協働」の例が多数見られた。 
  ひとつは、安否確認に威力を発揮したGoogle Japanと多数の市民の協働だ。災害発生直後、同社はハイチ地震の時等に効果的だったPerson Finderというデータベース・検索ソフトウェアを日本向けに、柔軟な発想で改訂する作業を始めた。現地の市民ボランティアからツイッターで、たいていの避難所にある手書きの名簿を活用したらという提案があり、それを携帯電話などで写真に撮り、現地でPicasaというGoogleの画像共有サービスにアップロードし、そのファイルをもとに全国のボランティアがPerson Finderに文字入力してデータベースを作成するという協働作業が始まった。震災一年後の時点で3千人を超えるボランティアによって14万件超のデータが入力されたという。 
  被災直後、移動体通信は2万8千局、固定通信は190万回線が壊滅的被害を受けた中、大学、国立研究機関、ボランティア団体に加えて多数の企業の協働によって、被災地において衛星通信チャンネルを活用した最新システムによって通信回復が実現したというケースもある。これは、慶應大学のチームが中心となり、国立天文台、NPO事業サポートセンター、シスコシステムズ、スカパーJSAT、インテル、IPSTAR、東芝、KDDI、HP、マイクロソフト、サイバートラストジャバン、IIJなどが協力したものだ。スカパーJSATやIPSTARの衛星通信や3G内蔵ルータ+WiFi技術等を使って、気仙沼市唐桑総合支所、陸前高田市米崎コミュニティーセンター、南三陸町地域包括支援センターを含む40数カ所で当座の通信が復活した。 
  「つながり」と「協働」という古くて新しい「方法」が社会に活力を与えてゆくことを期待したい。


著者略歴
慶應義塾大学工学部を卒業後、スタンフォード大学にて博士号を取得、ウィスコンシン大学で応用数学とコンピュータを教えるなどアメリカ・ヨーロッパに12年滞在後帰国。一橋大学教授を経て1994年より現職。

問い合わせ先
慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)


掲載日:2012年7月26日



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