「3.11後の企業行動」に関する寄稿文




第28回  「一人ひとりの多様な関りが求められている」

特定非営利活動法人ジェン 理事・事務局長
木山  啓子
専門 国際緊急自立支援

  緊急事態では、様々な物的支援が必要だ。家を津波で流失すれば本当に全てを失う。従って雨風をしのげる場所、食糧、衣類といった個人に必要な物から、汚泥撤去のための長靴、スコップ、一輪車などの道具、トラック、そして勿論、仕事を再開するための船、機械、工場等々、正に枚挙にいとまが無い。1年8か月経った現在、食糧こそ配布されなくなったが、店舗、番屋や牡蠣処理場といった多様な物的ニーズは依然として高い。だが、無策に提供し続けることは依存をもたらす可能性を孕んでいる。従って物的支援であっても、被災された方々が持っている力を引き出すもしくは回復する形で実施することが極めて重要だ。
  緊急時から実施することを旨とするJENの自立支援は、『誇り』と『前に進む力』の回復を目的としている。活動には①地元のリーダーの育成、②コミュニティの能力強化、③元々あった課題に取り組む、④新しい価値を創造する、という4つの要素がある。別の言い方をすると、緊急事態だからこそ、これら4つに取り組まざるを得ず、結果としてそれが自立を促進する。JENでは、自立を『問題を課題として設定し、その課題解決に周囲を巻き込める状態』と定義している。
  従来の経済的価値観や理論に基づけば、人口も収入も激減し、資機材への投資もままならない今の東北で経済的に成功することは絶望的に難しい。だからこそリーダーが皆を奮い立たせ、皆が力を合わせて元々あった課題に向き合いつつ新しい価値を生み出すしかない。それには多様な多数の人の関わりが必須だ。この復興を推進する人々の数と多様性が圧倒的に少ないことが、現在の最大の課題だが、企業には①~④の全てを実現する知見も資源も多様な人材も多数いる。
  日本という国を一人の人間に見立てると、その体の一部である東北がこれほど傷ついて、日本が通常の暮らしをできる訳がない。東北で起きていることは、私たちの問題なのだ。国民一人ひとりがその課題に取り組み、解決に周囲を巻き込める時、日本は、誇りと前に進む力を取り戻し、日本各地で起きている様々な問題も解決できて、日本の未来は大いに明るくなる。大震災直後から企業の支援活動には目覚ましいものがあったが、長期的に社員を派遣できる制度を確立し、現地に張り付いて復興を推進する役割を果たしていって欲しい。


著者略歴
1994年より紛争中の旧ユーゴスラビア地域代表として難民・国内避難民支援に従事。多くの緊急支援が依存をうむことに着目し『緊急事態からの自立支援』を提唱、紛争や自然災害の被災者支援をアフガニスタン、南スーダン、ハイチなどで実施している。2011年4月よりジャパン・プラットフォーム共同代表理事。日経「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2006大賞受賞。

特定非営利活動法人ジェン(JEN)
http://www.jen-npo.org   




掲載日:2012年12月5日



免責について   

 本ウェブサイトによって提供する情報は、当該企業各社から入手した情報を原文のまま掲載しており、情報の真偽や正確性、完全性などを保証するものではありません。また、本ウェブサイトによって提供する情報は、情報提供のみを目的としており、証券投資等の勧誘を意図するものではなく、直接または間接的に投資を促したり、売買を促すものでもありません。本ウェブサイト上の情報に起因して利用者および第三者に損害が発生したとしても、当社は一切の責任を負いません。