「3.11後の企業行動」に関する寄稿文



第30回  「いま改めて東日本大震災の復興を考える」

東北大学災害科学国際研究所副所長 (教授)
今村  文彦
専門 津波工学

   大震災から2年を迎える「いま」、改めて大震災からの復興を考えたい。この東日本大震災の被害は甚大であり、そこからの復旧・復興への課題は我々の予想を大きく上回った。マグニチュード9という大地震の後に発生した巨大津波、さらに、原子力発電所の事故も加わり、人類の歴史に経験のない長期で複合的な大災害になっている。現在も多くの問題が山積しており、国内においても震災直後の思いが薄れつつある中、多くの迷いと挫折感が支配しようとしている。いま、我々は、復興の原点に戻りその基本理念を振り返りながら、歴史と対話(史実と重ね合わせながら)し、将来の大きな姿を持ちながら一歩ずつ踏み出す事が重要であると考える。
   我々の復興の原点を確認するためにも、復興構想会議の提言に示された原則を振り返りたい。そこには以下が明示されている。失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私たち生き残った者にとって復興の起点である。鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する。さらに、被災地の広域性・多様性を踏まえつつ、地域・コミュニティ主体の復興を基本とする被災した東北の再生のため、潜在力を活かし、技術革新を伴う復旧・復興を目指す。このような理念を実施するには、改めて過去の地域での取組(地域性や潜在力)を見直し、一歩ずつ話合いを重ねて実行しなければならないと考える。
   慶長時代(1711)に東北地方は大震災を経験する。奥州慶長地震津波である。当時の国難を飛躍の機会に変えるべく、伊達政宗は智恵をめぐらせ、未来につながる壮大な夢を描いてみせた。外国航路の開拓である。スペインなどの海外交流の実現のために帆船を造り、大使に支倉常長を抜擢して、大海の彼方に送り出した。日本国奥州仙台藩が世界に向けた使節の派遣が大きなインパクトを欧州世界に与えたことは疑いない。常長は異境を旅すること7年、日本人の品位と不屈の魂を失わず、欧州の人々の胸に鮮やかな印象を刻みつけた。ただし、その後の鎖国政策により、航路開拓は断念せざるを得なかった。慶長地震津波の400年後に大震災を経験した我々は、歴史と対話しながら個々の復興事業の意義や位置づけを確認し実践することが肝要であると考える。


著者略歴

平成元年3月  東北大学大学院工学研究科博士後期修了
同年4月        東北大学土木工学科助手
平成4年        東北大学助教授(災害制御研究センター)
平成5年        アジア工科大学院助教授(2年間)
平成12年      東北大学教授
平成22年      災害制御研究センター長(2年間)
平成24年4月から災害科学国際研究所へ。

宮城県津波対策連絡協議会会長、内閣府中央防災会議、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会委員、日本自然災害学会前会長、内閣府中央防災会議専門委員、政府の復興構想会議検討部会委員、静岡県防災・原子力学術会議津波分科会長などを務める。
津波被害の軽減を目指した津波工学研究の分野をすすめる。特に、数値計算による津波予警報システムの開発や、太平洋での防災対策、津波避難行動などの研究を行っている。


筆者への問い合わせ先

『生きる力』市民運動化プロジェクト キックオフ・シンポジウム
http://irides.tohoku.ac.jp/event/ikiru/
災害科学国際研究所
http://www.irides.tohoku.ac.jp
グローバル安全学トップリーダー育成プログラム
http://www.g-safety.tohoku.ac.jp


掲載日:2013年2月20日



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