「3.11後の企業行動」に関する寄稿文




第35回  「3・11で見えた光」

認定NPO法人フローレンス 代表理事
駒崎  弘樹

   3・11後、私達フローレンスや仲間の多くのNPOが被災地支援事業に立ち上がり、現地に入っていった。私達も含め本業が災害支援でない社会的企業の多くが、本業と両立させながら被災地のための新規事業を立ち上げたのだった。

   しかし震災後、多くの国民は信頼の置けるNPOがどこにあるのか皆目分からず、とりあえずと日本赤十字に寄付をした。しかし義援金はその制度上の理由のため長らく留め置かれ、被災者のもとにすぐに届くことはなかった。また、NPOとの協働の経験がない被災地自治体の多くでは、我々の支援事業をどう扱ったら良いのか分からず、基礎的な連携すら叶わなかったところもある。

   更に震災直後にアメリカに寄付を募りに行った仲間は、日系人コミュニティから「私たちは祖国日本に寄付したくてたまらない。しかし日本のNPOは英語でWEBサイトを持っていないし海外に発信していないので、顔が見えない。仕方がなくジャパンレッドクロスに寄付をした」と言われたという。

   日本のNPOがもっと強靭で、もっと多くの国民に知られ、海外とのNPOや社会的企業たちとの繋がりもあり、発信力もあったならば、もっと迅速かつ強力に被災地支援事業に乗り出せたであろう。もっと多くの寄付を集め、もっと広範囲に多くの支援を展開できたであろう。地方の行政担当者にも名前を知られていれば、もっとすんなりと連携を行い、いち早く現地のニーズに沿った事業をきめ細やかに行えたであろう。全て自らの力の欠如によるものだ。残念ながら、私たちはまだまだ驚くほど脆弱だ。

   だが同時に、私は3・11に希望の光を見た。あの日々において、これまで日本においては大きな距離のあった企業セクターとソーシャルセクターが、その境を超えた。企業とNPOの境なく、人々は自分にもできることはないか、と動いたのを見た。検索エンジン大手であるグーグルはグーグルパーソンファインダーを始め、行方不明の人々をネット上で探せるようになった。大手携帯電話会社であるソフトバンクは登録すれば自動的に寄付ができる料金プランを発表した。フローレンスにも多くの企業から「自分たちにできることは無いか」という問い合わせが相次いだ。そこに営利企業だから、NPOだから、という違いはなく、今できることを、それぞれが果たす姿があった。

   今、日本は、世界一の速度で進む超少子高齢化や、先進国一の借金、破綻しかけた社会保障機能といった幾多の危機を抱えている。この危機を乗り越えていくには、NPOだけでなく、企業による社会問題解決が欠かせない。我々NPOは、必ずやそのパートナーになれるはずだ。

   セクターの違いを乗り越え、共に手をつなぐ時代が、既に現れようとしているのだ。


著者略歴

   慶應義塾大学総合政策学部卒。
   在学中に学生ITベンチャー経営者として、様々な技術を事業化。卒業後「地域の力によって病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくれまいか」と考え、ITベンチャーを共同経営者に譲渡しフローレンスをスタート。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスとして展開。現在、東京23区を中心とした首都圏にて働く家庭をサポートしている。また10年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。政府の待機児童対策政策に採用される。


筆者への問い合わせ先

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http://www.florence.or.jp/




掲載日:2013年9月12日



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